home > 鉄道風景写真講座 > 撮り鉄、今日もどこかで運行中 第7回
撮り鉄、今日もどこかで運行中

写真好きならば、一度は鉄道を撮りたいと想ったことがあるはず。
そんな人たちを、尽きせぬ愉しみへと導く、新たな写真講座です。

【コラム】韓国で出会った桜駅

 韓国のローカル線で、桜並木のある駅を撮影したのは2003年4月のこと。一日数本のみ運行の列車を降りると、満開となった見事な桜並木に迎えられた。
 駅員さんに、一言挨拶をしたのち撮影を開始。駅のホームは地域住民の通路にもなっているらしく、時折通行する人々が立ち止まっては桜を見上げてゆく。
 そんななか、今は使用されなくなったホームの上で、おばさん達が桜の木の下に敷物を広げはじめた。なにやら花見の宴が始まったようだ。「いい雰囲気だな」と思って見ていると笑顔で手招きされた。韓国語は分からないので、おそるおそる近寄ると、紙コップに注がれたビールを手渡された。僕はいつの間にか宴会の一員となっていた。
 宴会といっても慎ましく、ビールは乾杯の一杯だけ。お弁当やお菓子を囲んでお茶を飲んでいると、近所の親子が散歩に来たり、通行人が立ち寄ったりして、ほのぼのとした時間が流れていった。
 会食の後は、みんなで歌をうたった。何曲目かに歌われたのは、日本語の歌だった。おばさん達は、かつて日本語教育を受けたという。風に吹かれて舞う花びらを見ながら、その歌を聴いていると、ふと、自分が異国に居ることを忘れてしまいそうになった。

韓国で出会った桜駅

韓国で出会った桜駅


「わたなべせんせい、やさしかったですよ」
 おばさんの一人が、思い出したようにたどたどしい日本語で話しはじめた。この世代の韓国の人々は辛い思いをしたと聞いていただけに、少し意外だった。

 桜の咲く慶北線咸昌駅。
 現在は無人となってしまったが、ホームの桜は今年も美しい花を咲かせたことだろう。

よねや・こうじ

よねや・こうじ

1968年山形県天童市生まれ。東京工芸大学写真科卒業。
安達洋次郎・真島満秀に師事の後フリーランスとなる。
鉄道と人の結びつきをテーマに日本と世界の鉄道を撮影。
著書に『木造駅舎の旅』(INFASパブリケーションズ)
『ニッポン鉄道遺産』(斉木実氏と共著、交通新聞社)など。
日本写真家協会(JPS)会員。
http://www.geocities.jp/yoneya231/
  • 戻る
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 進む

PR情報