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撮影テクニック
被写体の一部を抽出するフレーミング
<風景写真>
大きさや形を鑑賞者の想像力に委ねる、全容を見せないフレーミングで被写体の魅力を高めよう。
フレーミングによる安定感と緊張感の表現差
全体像を写しこんだ例
全体像を写しこんだ例
桜の全容をとらえたもの。全体像が写しこまれることでこの桜の大きさ、形が写真の中で完結している。むろん、肉眼ではこのように見え、強い安定感が感じられる。しかし、この写真からは、これ以上この桜の姿を想像させる余地はない。
画面外を想像させるフレーミング
画面外を想像させるフレーミング
枝垂桜の美しいと感じた部分だけを抽出したもの。全体像がわからないゆえに、写真から緊張感が伝わってくる。画面外の大きさや形は頭の中で想像されることになるが、おそらく全容を写しこんだ写真より大きな桜に感じられるだろう。
 肉眼で風景を見たとき、ふつうその全容を確認することができる。これはごくあたりまえのことだ。そこでカメラを取り出して写真を撮ってみる。すると被写体の全容を入れたくなるのが普通だ。そうして撮影された写真を見ると、肉眼で見るのと近い印象の写真となり、とても安定感がある。
 しかし、ただ漫然と撮影しただけでは凡庸な写真になってしまうこともある。もし、そのような写真に心当たりがあるなら被写体の全容を見せず一部分を抽出するフレーミングを試してはいかがだろうか。
 被写体の全容を見せると、その被写体の大きさや形のすべてが画面の中に集約され、鑑賞する側もすべてを把握することができる。しかし、そこには鑑賞者が想像力や緊張感を感じる余地はなく、写真としてすべてが完結することになる。もし、安定感のある風景や威風堂々とした風景としてとらえるならこれでよい。
 だが、ここであえて被写体の全容を見せずに一部分だけを抽出してフレーミングしてみる。すると、鑑賞者は被写体の全体像が把握できなくなることで写真から緊張感を感じ取ることになる。そして、その先にあるはずの形や大きさを鑑賞者が自由に想像することになるのだ。
 作例は福島県田村郡三春町福聚寺の桜を撮影したもの。桜の全容を写しこんだ写真は、この桜の大きさや形を把握することができ、また安定感も感じられる。一方、桜の一部分だけをフレーミングした写真を見てみよう。この写真からは、その先にあるはずの大きさや形を写真からは読み取ることができず、桜の全容は鑑賞者の想像に委ねることになる。さらに被写体の一部分が画面の端で切れているので、写真からは緊張感も伝わることになる。
 だからといって、ただ闇雲に一部分を切り取ればいいというものではない。被写体を見たとき、撮影者がその被写体のどの部分に感動したか、あるいは美しいと感じたか、的確に見定めた上で切り取らないと、ただ不安定な写真となってしまう恐れがある。さらに前出したように、堂々とした安定感のある風景としてとらえるなら全容を見せたほうがいい場合もあるのだ。
 あえて全容を見せないフレーミングをうまく使えば、鑑賞者の豊かな想像力をかき立たせ、被写体の魅力をいっそう際立たせるスパイスとなりうるのだ。

全景の例
全景の例
福島県田村郡三春町芹ヶ沢の桜。全景で写し込み安定感のある構図になっている。
一部を切り取った例
一部を切り取った例
桜の一部を切り取ることで、安定感よりも動きを感じられる写真になっている。
写真・文:萩原俊哉

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