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撮影テクニック
被写体の「向き」を考慮した画面構成
ただ漠然と被写体にレンズを向けても、安定感や緊張感は伝わりにくい。ほとんどの被写体には「向き」があることを把握して画面構成を考えよう。
風景写真の被写体にも向きがある
被写体の向きを考慮していない構図 被写体の向きに合わせた構図
被写体の向きを考慮していない構図
中央に主役を配置すると安定感が得られるはずなのだが、被写体の向きを考慮しないとかえって不安定なイメージになりかねない。
被写体の向きに合わせた構図
被写体の向きにあわせて左側に空間を多めに配分したもの。安定感が得られている。
 被写体を画面の中に配置する際、どの位置に置くべきなのだろうか。そのヒントは被写体の「向き」にある。ここでいう被写体の向きとは、いったいどのようなものを表すのだろうか。わかりやすいのは人の顔だ。たとえばポートレート撮影をする際、人の顔が左右のどちらかに向いていたとしよう。そのとき、顔が向いている方向に空間をあければ、自然な安定感が得られる。逆に顔が向いていない方向に空間をあけると不安定なイメージになる。それと同じことが自然風景の撮影でもいえるのだ。
 そこで作例を見ながら被写体の向きについて考えてみることにしよう。作例は北海道美瑛で出会った一本の樹だ。どちらも同じ樹を撮影している。左の写真は、樹を画面の中心に配置したものだ。主役を中央に配置しているので本来なら安定感が得られているはずだが決してバランスのよい写真ではない。むしろ悪く感じるだろう。これは樹が「左を向いている」のに対して、手前の轍(わだち)の位置とのバランスが悪く、双方の配置を配慮せずに撮影したために不安定な印象になっているのだ。
 そこで樹の向きとこの轍の位置を考慮しながら撮影位置を変え、バランスを取り直したものが右の写真だ。樹を画面の右側に配置して左側の空間をあけ、さらに轍を樹の向いている左方向に寄せていることで安定感が得られている。むろん、被写体の向きといっても主役の向きだけではなく、周囲の脇役たちの向きによっても受ける印象に違いが出てくることもある。
 自然風景では、花はもちろん、滝、渓流などの被写体では「向き」がわかりやすいかもしれない。花なら開花している方向、滝や渓流なら下流側の方向といった具合だ。また光線の当たり方や光の筋などにも向きを見出すことができる。むろん安定感を得るためだけがその目的ではない。あえて逆向きにすることで、画面から緊張感を得られたり、視線を引きつけることも可能だ。まずは感覚的なものでいいので、被写体の向きというものを意識してみるといいだろう。


写真・文:萩原俊哉

安定感のある構図 緊張感の要素を加えた構図
安定感のある構図
滝は比較的「向き」がわかりやすい被写体だ。左上から右下に流れるこの滝は、右に向いていると判断できる。そのため、安定感を得るために右側に空間を配置した。
緊張感の要素を加えた構図
この写真の滝も右を向いている。しかしあえて左側の空間を多めにとることでバランスを崩し、写真に不安感や緊張感を加えた。

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